OECD、Amount B導入国プロファイルを拡充 – 世界83国が対象に
OECD は2025年10月、移転価格制度に関する国別プロファイル(Transfer Pricing Country Profiles)第3バッチを公開し、新たに25か国・地域(例:タイ、UAE、ザンビア、グアテマラ、カボベルデなど)を加え、対象国・地域数を 83 に拡大しました。
この更新では、難評価無形資産(hard-to-value intangibles, HTVI)や、基盤的な販売・マーケティング機能に対する簡素化・合理化されたアプローチである Amount B に関する各国の制度及び実務について詳しく示されています。
背景と枠組み
- Amount B は、デジタル化等の国際課税の課題に対応する BEPS project(Base Erosion and Profit Shifting / BEPS 二本柱政策)枠組みの一部で、基盤的な販売・マーケティング機能 (baseline marketing & distribution) に対して、あらかじめ定められた利益率を適用できる方式です。
- Amount Bについては2024年2月19日に最終報告書が公表され、各国は2025年1月1日以降に開始される事業年度についてAmount Bアプローチを法制化するか否かの選択を迫られました。また、2025年2月には関連文書を統合した「Consolidated Report」も公表されました。
- OECDは、利益率算定を支援する「Pricing Automation Tool」や説明用の Fact Sheet も公開しており、少ない入力で自動的に対象企業の利益率計算を行える仕組みを提供しています。
日本および他国の最新動向
- 日本では、国税庁 が 2025年6月に FAQ を公開し、日本は Amount B を導入しない方針を明らかにしました。そのため、日本ではAmount Bの概念に基づく簡素化・合理化アプローチを採ることは認められず、従来の移転価格算定方法を用いた分析を継続する必要があります。これは、たとえ取引先がAmount B導入国であっても、影響を受けません。
- 米国では2025年1月1日以降開始の事業年度においてOECDの簡素化・合理化アプローチの選択適用が可能となりました(義務化については継続的に議論)。
- ドイツなど一部の国では、移転価格文書化要件の見直し(提出期限の短縮、罰則強化、取引マトリックスの導入など)が進んでおり、移転価格文書の整備等の必要性が高まっています。
実務上の示唆(概要)
- グローバル企業は、進出先ごとに導入状況を確認し、Amount B が適用可能かを判断する必要があります。導入国/未導入国を区分してシステムを整備することが重要です。
- Amount Bの適用を検討する場合には、販売子会社などが限定的なマーケティング・販売機能(付加価値が少ない/リスクが限定的な子会社)かどうかについて、機能分析・契約実態分析で確認し、Amount Bの要件(費用比率など)を充足するかを検証する必要があります。
- 既存の事前確認制度 (APA) や移転価格文書との整合性を保ちつつ、移転価格課税リスクを低減するためには、グループにおけるAmount Bの適用範囲を見極め、文書化はもとより、将来的な改正にも備えたプランニング、継続的な管理のための移転価格ガバナンス体制の構築といった対応が有効になります。
参考文献等
OECD HP, ”OECD publishes the third batch of updated transfer pricing country profiles with new insights on hard-to-value intangibles and simplified distribution rules”(2025 Oct.)
OECD HP, ”Pillar One – Amount B”(2025)
OECD HP, ”International tax reform: Release of new tools for the implementation of Amount B relating to the simplification of transfer pricing rules”(2024 Dec.)

