【裁判例】IHI、タイ子会社との取引に関する移転価格訴訟で勝訴
IHIはタイ子会社との取引について、東京国税局から更正を受け、約 100億円 の申告漏れとされ、追徴税額約43億円を納付したことが各種報道、同社の公表情報から明らかとなっていました。その後、同社は更正処分の取り消しを求めて訴訟を提起し、2023年12月7日に一審勝訴、国税側はこれを不服として控訴していましたが、2024年12月11日に国側の控訴が棄却され、最高裁への上告は行われずに確定に至りました。
概要
- 対象は 2013年3月期以降の4事業年度の国外関連者につき、税務当局はTNMMに基づく移転価格課税を行った。
- 同社は更正処分に異議を申し立てたが棄却され、訴訟を提起。比較対象企業の選定等が争点となり、比較可能性等が争われた。
- 第1審に続き、第2審でも納税者側が勝訴し、結果的に税務当局の更正処分が覆されることとなった。
かつては納税者敗訴事案が多かった移転価格訴訟も納税者が勝訴するケースが増えてきました。
本件では、納税者が利益分割法の適用を主張していたところ、実務上最も適用が多いTNMM(に準ずる方法と同等の方法)の適用を主張した国税側の主張が退けられることとなりました。端的な結論としては、当局が選定した比較対象企業の比較可能性が、同市場における市場占有率や需要等の観点から不十分とされ、TNMMの適用が否定され、決着したものです。ホンダ事件(2015年5月13日)に通じる側面も見られますが、今回の争訟では多角的な論点が検討されています。移転価格税制はもともとルールの明確性に乏しく、個別事案ごとの判断が重視される領域です。その中で、本件を通じて解釈や適用に関する新たな判断基準が示されたことは、実務に携わる専門家にとって大きな意義を持つものといえます。
参考文献等
週刊税務通信(No3861)「東京高裁 移転価格税制の取引単位営業利益法を巡り控訴審も国側が敗訴」(税務研究会)週刊税務通信(No3811)「東京地裁 移転価格税制を巡り納税者が勝訴」(税務研究会)日本経済新聞(Web版、2021年1月23日付)「IHI、移転価格めぐり訴訟 国税「100億円申告漏れ」指摘」

