最近の動向

ポーランドでは移転価格が依然として税務当局の重点領域であり、TPR(移転価格情報申告)制度整備のほか、当局による分析・調査選定の高度化が進んでいます。近年の実務上の要点として、文書化・報告の期限、およびTPRに含まれる宣誓(声明)・署名要件の厳格化が挙げられます。同国の移転価格に対する関心は、移転価格調査件数の増加や税務調査官の専門性の向上にも現れているとされています。
2022年におけるポーランド移転価格税制の最も重要な変更点は、移転価格報告義務の履行期限の変更(短縮)および移転価格報告書(TPR)内で開示すべき情報の範囲に関する変更です。この変更は2022年1月1日以降に適用されており、以下のような内容になっています。
- ローカルファイル(移転価格分析/ベンチマーキング等):会計年度終了後10か月目の末日までに整備(作成)
- TPR(TPR-C/TPR-P):会計年度末後11か月末までに電子提出(ローカルファイル整備および独立企業間条件に関する声明を含む)
- マスターファイル:会計年度末後12か月末までに整備(作成)
- TPRの提出・署名
TPRは所轄税務署長宛てに電子提出し、原則として経営陣メンバーによる署名が求められます。一定の場合には、弁護士・税務顧問・法定監査人等の代理人による署名も認められます。
また、TPRの未提出や不実記載は、TPRを提出する者や状況により当該法人の経営陣個人としての制裁リスクにつながり得るため、形式面を含むコンプライアンスの整合が重要とされています。
基本情報
税務当局
国内税務事務局(National Revenue Administration あるいはKrajowa Administracja Skarbowa、KAS)※財務省傘下
移転価格税制の対象取引
ポーランドの移転価格税制は、関連者間で行われる取引を対象とします。
法人税法および個人所得税法に基づき、「関連者」とは、資本関係のみならず、人的関係や経済的影響力を通じて他の事業体に重要な影響力を及ぼす者を広く含むものとされています。
具体的には、以下のような関係が該当します。
- 資本・権利関係を通じた重要な影響力
ある事業体が、他の事業体に対して、直接または間接に以下のいずれかを25%以上保有している場合- 資本持分
- 議決権(監督・意思決定・管理機関)
- 利益または財産に対する持分・参加権
- 人的支配・経済的影響力
個人が、法人または法人格を有しない組織体の主要な経済的意思決定に影響を与える能力を有する場合。 - 親族関係を通じた影響力の連鎖
重要な影響力を有する個人の配偶者、血族または姻族(二親等以内)を通じて、間接的に影響力が及ぶ場合。 - パートナーシップ等の特殊形態
法人格を有しない事業体およびそのパートナー(無限責任社員を含む)も、移転価格税制の適用対象に含まれます。 - 恒久的施設(PE)
課税主体とその外国支店・恒久的施設との間の取引も、関連者間取引として取り扱われます。
OECDとの協調状況
OCDガイドライン等への準拠状況
OECD加盟国であり、概ね準拠している。
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか
Yes
MCAAへの署名状況
Yes
文書化制度の概要
ポーランドは、移転価格文書化に関してBEPS行動13を適用しています。
文書化規定の概要は下表の通りです。
CbCR
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| 通知の要否 | 要 |
| 報告期限 ※報告対象期間の最終日を基準とした場合 | 12カ月以内 |
| 代理親会社による提出の可否 | N/A |
| 罰則の有無 | 有 |
MF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | 概ね充足 |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
LF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | No |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
OECDフォーマットとの重要な相違点として、以下のような点が挙げられます。
マスターファイル
2019年1月以降、OECDフォーマットとポーランドの規制との間に実質的な相違点は存在しないものの、記載粒度等につき細則あり
ローカルファイル
ローカルファイルはOECDフォーマットと比較して、取引価額や実際の送金額といった詳細な取引別情報が求められます。
CbCRについてはOECDフォーマットとの差異は特にありません。

