最近の動向

フランスの移転価格税制について、近年、制度そのものに大きな改正は行われていません。一方で、移転価格文書化の内容や税務調査における検証は年々厳格化しており、特に無形資産取引やグループ内再編取引に対する関心が高まっています。
基本情報
税務当局
フランス税務当局(French tax authorities、FTAないしDirection générale des Finances publiques(DGFiP))
移転価格税制の対象取引
フランスの移転価格税制は、関連企業間で行われる取引に適用されます。関連企業の概念は広く解釈され、法的な支配関係のみならず、「事実上の」支配関係も含まれる点が特徴です。
事実上の支配関係
株式保有等による明確な支配関係が認められない場合であっても、契約関係その他の事実関係を総合的に考慮し、実質的な支配・依存関係が認められる場合には、関連企業に該当します。
法的な支配関係
一方の企業が他方の企業の株式又は議決権の多数を保有している場合や、直接又は間接に意思決定に対する支配的影響力を有している場合。
OECDとの協調状況
OCDガイドライン等への準拠状況
OECD加盟国であり、概ね準拠している。
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか
Yes
MCAAへの署名状況
Yes
文書化制度の概要
フランスはOECD BEPS行動13を国内法に導入しており、
- 国別報告書(CbCR):2016年1月1日以降に開始する事業年度から
- マスターファイルおよびローカルファイル:2018年1月1日以降に開始する事業年度から
それぞれ、一定規模以上の多国籍企業グループを対象に適用されています。
CbCR
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| 通知の要否 | 要 |
| 報告期限 ※報告対象期間の最終日を基準とした場合 | 12カ月以内 |
| 代理親会社による提出の可否 | N/A |
| 罰則の有無 | 有 |
MF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | 概ね充足 |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
LF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | OECD+α |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
フランスは、租税手続法(LPF)L.13 AAに基づき、OECD BEPS行動13(マスターファイル/ローカルファイル)を国内法に導入しています。もっとも、政令やBOFiPにより、OECDフォーマットに一定の追加要件が課されている点が特徴です。
マスターファイル
記載すべき項目や構成については具体的な指針が示されており、全体的な内容はOECD行動13と整合していますが、フランスでは、マスターファイルは電子形式で提出することが求められ、記載される財務データについては、税務当局が計算過程を検証できる形式で提供する必要があります。実務上は、スプレッドシート等の数値検証が可能な形式での提出が一般的です。
ローカルファイル
ローカルファイルについても、マスターファイルと同様に電子形式かつ検証可能な形式での提供が求められます。加えて、フランス特有の要件として、当該事業体の財務情報は法定会計書類に基づくことが明確に求められています。
具体的には、勘定科目番号の明示や、移転価格目的で用いる管理会計と法定会計との間の詳細な調整表(reconciliation)の作成が必要となります。これにより、総勘定元帳に計上された費用・収益が、対象取引やマージン計算にどのように反映されているかを明確に説明することが求められます。
これらの要件により、フランスのローカルファイルは、OECDガイドラインが求める水準を超える詳細性・厳格性を有しており、納税者にとって実務負担が相対的に大きい制度となっています。
なお、国別報告書(CbCR)については、OECDフォーマットとの間に重要な相違点はありません。

