ベトナム Vietnam– 各国の移転価格税制 –

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最近の動向

ベトナム政府は、2020年11月5日付で政令132/2020/ND-CP(以下「政令132」)を公布し、2017年の政令20/2017/ND-CPおよびその後の関連改正・通達を再整理する形で、移転価格規制を全面的に改正しました。本改正は2020年度以降に適用されています。政令132による主な改正事項として、以下のような点が挙げられます。

  • 法人所得税(CIT)を申告納税方式で納付しない納税者(例:外国契約者など)も政令132の規定の適用対象となるケースを想定。
  • 関連者の定義が拡張され、出資持分の(閾値以上の)移転・借入・貸付関係等を通じた実質的な影響関係を有する企業も、移転価格税制の対象となり得る。
  • 独立企業間価格の算定において、比較対象レンジの下限を35パーセンタイルに引き上げ。
  • 法人税の算定における控除対象純利息費用に関する規定及び指針を政令68号から継承(2017年度及び2018年度の遡及適用、並びに上限超過利息費用の今後5年間の繰越控除を含む)。
  • 当局内部のデータのほか、商業データベースの利用を明示的に認めた(政令132違反とみなされる場合には、当局がいわゆるシークレットコンパラブルを使用する可能性あり)。また、比較可能性分析において、特定の要件を満たす場合には、比較可能性分析の範囲を以下のように拡大できることを明確にした。
    • 納税者の事業サブセクターと同一の現地市場ないし国における、最も類似したサブセクターに属する独立した比較対象企業の選定。
    • 類似した産業・経済条件を有する地域・国まで比較対象を拡張可。
  • 文書化については、一定の要件をすべて満たす場合に限り移転価格文書作成義務が免除される一方、税務調査・検査時には、当局からの提出要請通知を受領した日から原則10営業日以内、税務調査・検査前の協議段階では原則30営業日以内の資料提出が求められるなど、以前に増して実務対応の迅速性が求められる。
  • 政令132は、政令20よりも具体的なシナリオに基づいて国別報告(CbC)に関する詳細な報告義務を規定。

このように、ベトナムの移転価格税制は、OECD BEPSプロジェクトの方向性を踏まえつつ、独自に厳格化・具体化が進んだ制度となっており、関連者取引を行う企業にとっては、事前の方針整理と継続的な文書化対応が不可欠です。

基本情報

税務当局

ベトナム税務総局(General Department of Taxation、GDT)

移転価格税制の対象取引

ベトナムの移転価格税制では、政令132に基づき、「関連者(related parties)」間で行われる取引が規制対象となります。関連者の判定にあたっては、単なる資本関係にとどまらず、経営・管理・支配関係や金融面での依存関係まで含めた広範な基準が設けられています。
具体的には、以下のような場合に、当事者間取引は移転価格税制の対象となります。

  • 所有関係に基づく関連性
    一方の企業が他方の企業に対して直接または間接に25%以上出資している場合、または第三者が両企業に対して25%以上の共通出資を行っている場合など。
  • 経営・管理・支配関係に基づく関連性
    取締役会や執行機関の過半数を任命する権限を有する場合、財務方針や事業活動を実質的に決定できる場合、あるいは親族関係を通じて実質的な支配が及んでいる場合など。
  • 金融取引を通じた関連性
    保証付き融資や資金提供の金額が、借入企業の自己資本の25%以上かつ中長期債務の50%超を占める場合など。
  • 恒久的施設(PE)間取引等
    本店と恒久的施設(PE)との間、または同一企業の複数PE間で行われる取引。

OECDとの協調状況

OCDガイドライン等への準拠状況

ベトナムはOECDの加盟国ではなく限定的。OECDガイドラインは参考資料となり得るものの、公式に規則や執行に取り入れられているわけではない。ただし、政令132はBEPS行動13の概念を取り入れている。

OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか

Yes

MCAAへの署名状況

Yes

文書化制度の概要

ベトナムは、移転価格文書化に関してBEPS行動13を適用している。
文書化規定の概要は下表の通りとなっている。

CbCR

制度の有無
通知の要否
報告期限
※報告対象期間の最終日を基準とした場合
12カ月以内
代理親会社による提出の可否不可
罰則の有無

MF

制度の有無
OECD形式で充足するか概ね充足
作成等の要請同時文書化+提供(準備)
罰則等の有無

LF

制度の有無
OECD形式で充足するか概ね充足
作成等の要請同時文書化+提供(準備)
罰則等の有無

なお、いずれの文書についても、特にOECDフォーマットとの重要な相違点はないものとされています。

参考資料等

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