最近の動向

シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、2021年8月10日付で「移転価格ガイドライン(第6版)」を公表しました。本ガイドラインは、2006年に発行された従来の移転価格ガイドラインおよび、2015年から2018年にかけて発行された複数の補足ガイドラインや通達を統合・更新したものです。
第6版では、近年のOECD移転価格ガイドラインおよびBEPSプロジェクトの動向を踏まえ、以下の分野について実務的な整理とガイダンスの拡充が行われています。
- 関連者間の金融取引および費用分担契約(CCA)に関する具体的な取扱い
- 関連者間サービス取引における受益テスト(benefit test)の明確化、低付加価値サービスに対するセーフハーバー利益率、および特定の利益水準指標(PLI)の使用に関する指針
- 移転価格文書化要件の補足説明ならびに、移転価格調整が行われた場合の取扱いおよび追加課徴金(surcharge)に関する整理
- 移転価格税務調査への対応方法、紛争予防・解決手続(APA、MAP)、および仲裁手続に関する詳細な説明
このように、第6版ガイドラインは、シンガポールにおける移転価格実務の実務基準を体系的に整理した包括的な指針であり、関連者間取引を行う企業にとって、価格設定・文書化・税務調査対応のいずれの場面においても重要な参照資料となっています。
基本情報
税務当局
シンガポール内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore、IRAS)
移転価格税制の対象取引
シンガポールの移転価格税制は、関連者(related parties)間で行われる取引を対象とします。
一般に、一方が他方を直接または間接に支配している場合、または双方が共通の者の支配下にある場合、当該当事者は関連者とみなされます。加えて、形式的な持分関係に限らず、取引条件に重要な影響力を及ぼし得る関係も考慮されます。
また、企業の本店と恒久的施設(PE)との間の取引や、同一企業に属する複数の恒久的施設間の取引についても、独立企業原則に基づく利益配分が求められ、移転価格税制と同様の考え方が適用されます。
このように、シンガポールでは、法形式のほか、実質的な支配・影響関係も重視して移転価格税制の適用範囲が判断されており、グループ内取引のみならず、恒久的施設を含むクロスボーダー取引についても慎重な検討が必要となります。
OECDとの協調状況
OCDガイドライン等への準拠状況
シンガポールはOECD加盟国ではないが、BEPS関連国に位置づけられる。2024年版シンガポール移転価格ガイドラインは、概ねOECDガイドラインとの平仄がとられている。
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか
Yes
MCAAへの署名状況
Yes
文書化制度の概要
シンガポールは、移転価格文書化に関してBEPS行動13を適用している。
文書化規定の概要は下表の通りとなっている。
CbCR
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| 通知の要否 | 要 |
| 報告期限 ※報告対象期間の最終日を基準とした場合 | 12カ月以内 |
| 代理親会社による提出の可否 | 可 |
| 罰則の有無 | 有 |
MF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | 概ね充足 |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | – |
LF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | 概ね充足 |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
いずれの文書もOECDフォーマットと概ね同様となっている。

