最近の動向

マレーシア内国歳入庁(IRBM)は2023年5月、移転価格税制の実務運用を強化するため、Income Tax (Transfer Pricing) Rules 2023(以下、” Rules 2023”)を公布し、Year of Assessment(YA)2023以降(2023年1月1日以降終了年度)に適用しています。さらに、近時はMalaysia Transfer Pricing Guidelines 2024(MTPG 2024)等により、文書化・開示実務がアップデートされています。また、IRBMはMTPG 2024と同時にTransfer Pricing Tax Audit Framework 2024も公表し、関連者間取引に関する税務長差に関するガイダンスも提供しています。なお、APA Guidelines 2024等により、事前確認(APA)に関する枠組みも整理・更新しています。文書化関連の主な更新事項等は以下の通りです。
- 同時性(contemporaneous)文書化の厳格化:移転価格文書は、原則として申告期限までに作成(完成日付の付与を含む)していることが求められ、税務当局から要請を受けた場合には所定期間内に提出する運用が想定されます。
- 文書の構成・開示項目の拡充:Rules 2023では、OECDガイドラインで言うマスターファイルと同様(+α)のMNEグループに関する情報(Schedule 1)や、OECDガイドラインで言うローカルファイルファイルと類似した納税者・取引情報(Schedule 2)、費用分担契約等(Schedule 3)を含む情報整備が求められ、文書の形式面も含めて要求水準が高まっています。
- アームズ・レングス範囲と中央値の活用:独立企業間レンジは37.5パーセンタイル〜62.5パーセンタイルとされ、マレーシア側の検証対象企業の実績が独立企業間レンジを下回る場合には中央値を比較の基準点として中央値を用いる取扱いが示されています(特定の状況下(比較対象企業の比較可能性が低い場合や比較可能性の欠陥を定量化ないし特定・調整できない場合)には、最大で62.5パーセンタイルまで調整を行うことがある)。
- 文書化義務の対象・内容の明確化と免除条件:MTPG 2024では、一定の条件を満たす納税者は、同時性文書化(CTPD)の作成が免除され得る一方で、アームズ・レングス原則の遵守と関連証拠書類の保存義務は維持されることを明確にしました。また、フルスコープの移転価格文書化(一定規模以上の企業等が対象)とミニマム文書化の概念を打ち出し、作成基準を定めました。
- 比較可能性分析とデータ要件の強化等:MTPG 2024は、比較対象企業の選定やデータの検証要件を強化するとともに、レンジの適用にあたっての条件等がより明確にしました。
OECDガイドラインとの整合性の向上:MTPG 2024は、事業再編の取扱いに関する規定整備や低付加価値サービス(LVAS)に係る簡易的アプローチを導入するなど、OECDガイドラインとの整合性を高める規定が盛り込まれました。
基本情報
税務当局
マレーシア内国歳入庁(Inland Revenue Board of Malaysia、IRBM)
移転価格税制の対象取引
一方の者が他方の者の経営、支配または資本に直接または間接に関与している場合、または同一の者が両者の経営、支配または資本に関与している場合、当該当事者は「関連者(associated persons)」とされ、国内外に関わらず、関連者との取引は移転価格税制の対象取引となる。
支配関係は、ある者が別の者の株式資本の20%以上50%未満を所有し、かつ以下の条件のうち少なくとも一つを満たす場合に存在するとされる。
- 無形資産の依存:事業が、他者または第三者が提供する無形財産に依存している
- 事業活動の支配:当該者の事業活動が他の者に指示され、価格その他の条件が当該他の者または第三者の影響を受けている
- 経営支配:当該者の取締役や取締役会の構成員が、相手方または第三者によって任命される
OECDとの協調状況
OCDガイドライン等への準拠状況
大部分において準拠。ただし、OECDガイドラインの基本原則を尊重しつつも、独自の要件も適用している。
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか
Yes
MCAAへの署名状況
Yes
文書化制度の概要
マレーシアは、2017年1月1日より、現地規制においてCbCRに関するBEPS行動13を採用し実施した。
文書化規定の概要は下表の通りとなっている。
CbCR
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| 通知の要否 | 要 |
| 報告期限 ※報告対象期間の最終日を基準とした場合 | 12カ月以内 |
| 代理親会社による提出の可否 | 可 |
| 罰則の有無 | 有 |
MF
| 制度の有無 | (実質)有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | OECD +α |
| 作成等の要請 | 提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
LF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | OECD +α |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
なお、OECDフォーマットとの重要な相違点として、以下のような点が挙げられる。
ローカルファイル
BEPS行動13のローカルファイルよりも詳細かつ広範な情報開示が求められている。
参考資料等
- “Worldwide Transfer Pricing Reference Guide 2025”, EY Global(2025)
- “Transfer pricing guide 2022 New Zealand”, Deloitte(2025)
- PwC”Malaysia introduces new transfer pricing guidelines and transfer pricing audit frame work”(Jan 28, 2025)
- KPMG”Tax Whiz: Malaysia Transfer Pricing Guidelines 2024 and Transfer Pricing Tax Audit Framework 2024” (Jan 23, 2025)

