最近の動向

近年、オーストラリア国税庁(ATO)は、税務コンプライアンスを強化している。例えば、ATOのコンプライアンスプログラムに連邦予算を割いたり、民間実務家をATOで大量採用しているほか、ATOの見解を納税者に周知する公的裁定や実務遵守指針(Practical Compliance Guidelines 、PCG)を追加するなどといった取り組みが進められている。
PCGsは、納税者が特定の種類の国境を越えた関連者間取引に関するリスク評価のためのフレームワークを提供している。さらに、さまざまな納税者向けアラート(TA)が発行されている。関連するPCGsとTAには、以下のものが含まれる。
- PCG 2017/2: ATOの移転価格問題に関するコンプライアンスアプローチ
- PCG 2017/4: 国外関連者間融資取引
- PCG 2019/1: 輸入関連の販売代理店契約に関する移転価格問題
- TA 2020/1: 独立企業間価格原則に適合しない取決めおよび無形資産の開発・改良・維持・保護・活用に関連するスキーム
また、上位1,000社向けのものなど、様々な税務調査プログラムなどが執行されており、移転価格関連の訴訟も急増している。
基本情報
税務当局
オーストラリア国税庁(Australian Taxation Office、ATO)
移転価格税制の対象取引
オーストラリアの移転価格税制の適用範囲 オーストラリアの移転価格規定(ITAA 1997 Division 815)は、法律上の「関連者」定義を置かず、越境取引における実際の条件が「独立企業間条件(arm’s length conditions)」と異なることにより、豪州で「移転価格上の利益(transfer pricing benefit)」が生じた場合に適用される(したがって、支配権や持株比率といった形式的な閾値を充足するか否かは適用要件にはならない)。
一方、実務上、国際取引明細書(International Dealings Schedule: IDS)やローカルファイルに関する指針や規定では、「国際関連者(International Related Parties: IRP)」が定義されており、概ね、商業的・財務的関係において完全に独立して取引していない者同士(例:一方が他方の経営・支配・資本に関与、または共通の者が双方の経営・支配・資本に関与)が該当するものとされている。日本との比較では、個人も関連者として扱われている点は特徴的であると言える。
OECDとの協調状況
OCDガイドライン等への準拠状況
OECDガイドラインに概ね準拠している。
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)の参加国かどうか
Yes
MCAAへの署名状況
Yes
文書化制度の概要
名目上、オーストラリアはOECDのBEPS行動13で定められた3段階の文書化アプローチを採用しているが、「ローカルファイル」の解釈は、他の国で見られるものとは著しく異なっている。文書化規定の概要は下表の通りとなっている。
CbCR
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| 通知の要否 | 不要 |
| 報告期限 ※報告対象期間の最終日を基準とした場合 | 12カ月以内 |
| 代理親会社による提出の可否 | N/A |
| 罰則の有無 | 有 |
MF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | OECD +α |
| 作成等の要請 | 提出+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
LF
| 制度の有無 | 有 |
|---|---|
| OECD形式で充足するか | OECD +α |
| 作成等の要請 | 同時文書化+提供(準備) |
| 罰則等の有無 | 有 |
なお、CbCRおよびマスターファイルについてはOECDフォーマットとの相違はほぼないが、ローカルファイル(LF)については以下のような違いがある。
オーストラリアにおけるLFの特徴
オーストラリアのLFは、移転価格文書ではなく取引データ等を3部構成で提供する構成となっている。LFはショートフォーム・パートA・パートBの三部構成で、取引データ、契約書、APAなどの情報開示が求められている。なお、 2024年1月1日以降開始事業年度からはショートフォームの要件が大幅に拡大されている。

